縮小手術
再発を考慮すると安易に切除範囲を縮小することも危険がありますが,縮小手術は体へ負担も少なく,手術後の完全な社会復帰も可能であり,多くのメリットがあります。
この縮小手術が進んで行われるようになった理由として,過去のデータから早期がんの場合,切除する必要性がない部位がわかるようになったこと,診断装置や診断法の進歩により早期のがんの発見が可能になったこと,放射線や化学療法の進歩で治療を補うことができるようになったことなどがあげられます。
近年は医療器具や治療技術の進歩などにより,臓器の働きや機能をできるだけ残すようにする機能温存手術も進んで取り入れられるようになりました。
喉頭の発声機能や排便機能,性機能などを始め多く部位で機能を温存する工夫がされ,慎重に行われるようになっています。これには患者の手術後のQOLを重視するという考え方が広まってきた背景もあります。また開腹せずに手術が可能な内視鏡手術や腹腔鏡手術も急速に普及しています。
●腹腔鏡下手術
腹腔鏡と呼ばれるカメラを入れ,開腹せず,カメラや治療器具を入れ,患部を取り出す最小限の切開で手術を行う方法を腹腔鏡下手術と言います。
この手術は,開腹手術が20cm以上に大きく切開しなければならないのに対して,切開部分も5cm以下と小さいため,患者の負担が少なく,術後の痛みも少なく,1~2週間で退院できるというメリットがあります。
この手術が導入されたのは1990年代初頭で,当初はリンパ節の郭清ができなかったり,摘出する部位も限定されていましたが,その後技術の進歩により,適応範囲も拡大しています。
腹腔鏡手術は高度な技術が要求され,施設によっても格差があるので,治療数などよく調査しておきたいものです。まだ標準的ながん治療とされてはいませんが,今後もさらに普及し発展する治療法であると考えられます。
●内視鏡手術
内視鏡治療は,開腹せずに行うことができ,がん治療のなかでもきわめて侵襲が少なく,患者への負担が軽い治療です。高齢者でも可能で,静脈麻酔を行うことで苦痛も少ない手術です。
開腹手術と比較して,入院期間も半分以下と少なく,早期に社会復帰が可能で,QOLの低下もほとんどなく,治療費が開腹手術に比較して安いというともメリットと言えます。
ただし,問題もあります。きわめて少ない頻度ではありますが,出血や穿孔(せんこう)などの事故が起きることがあるということです。
また,内視鏡治療は開腹しないため,治療できる部位は限られます。治療可能な部位は,食道,胃,大腸,などの消化管や胸腔,胆嚢,膀胱などです。またリンパ節転移がなく,腫瘍がすべて一括切除できる早期の大きさであり,かつ組織型が分化型などの条件があります。
消化管のがんでは,内視鏡の先端からリング状の針金(スネア)を出して,患部にはめ,このスネアを絞り込むことによって病巣を突出させ,高周波電流を流して焼き切るというポリペクトミーと呼ばれる治療法や病巣の粘膜の下に生理食塩水を注入してがん病巣を浮き上がらせ,スネアでつまみあげ,焼き切るという粘膜切除術(EMR)も行われています。
また,近年では粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)も確立され,ITナイフの開発で病変の大きさにかかわらず,多くの場合早期のがんであれば一括切除が可能となりました。