拡大手術
拡大手術は成果をあげているという見解がありますが,一方では否定的な考えもあります。なぜなら,人間からだは多くの器官が連携しあって機能しているものであり,拡大して切除するほど,トータルとして生命を維持する能力やQOLが低下してしまうからです。
●膵臓がんの標準手術と拡大手術
膵臓がん(膵頭部浸潤性膵管癌)治療の研究報告ではリンパ節廓清のみの標準手術とリンパ節・神経叢の広範囲廓清を行う拡大手術とを比較した場合,3年生存率が標準手術で29.3%,拡大手術で15.1%と下がり,このケースでの拡大手術は生存率の低下を招き,延命効果のないことを立証しています。
●胃がんの標準手術D2郭清と拡大手術
進行胃がんの治療で,胃の周囲のリンパ節を広く切り取る拡大手術と, 一定範囲の切除にとどめる標準的な手術(D2郭清)では,治療効果にほとんど差がないという調査結果を日本の国立がんセンターがまとめ発表しました。
報告した同センター中央病院の笹子三津留副院長は「リンパ節を多くとったことで,患者状態を悪化させている可能性もあり,標準治療 はD2郭清と考えるべきである。」と話しました。
しかし, 1999年オランダで行われた胃がん手術の大規模な比較試験の結果は,日本の標準的な手術D2にでさえ,疑問を投げかけるものでした。
この胃がんの比較試験の結果では,日本での標準的治療とされてきた胃の周囲のリンパ節の第2群と呼ばれる範囲まで取り除くD2手術は,より狭い範囲のリンパ節を取り除くD1手術より,5年生存率ではほぼ同等だったものの,手術時の死亡率や合併症の発生数で上回ってしまったのです。
●拡大手術の問題点
リンパ節はがん細胞を抑える働きのあるリンパ球が集まる部位でもあり,拡大手術によるリンパ節廓清による免疫力低下も問題点としてとらえなければなりません。この廓清はさらに神経繊維をも切断し,機能障害を起こすこともあります。
医師の間でも,再発とQOLのバランスを考えると,どこまで切除すべきか意見が分かれるところです。いずれにせよ拡大手術は体へのダメージや免疫力の低下,術後のQOLの低下が大きくなることを覚悟しなければなりません。
また,がん治療の手術に限らず,長時間にわたるような大きな手術は細胞の生体反応により,全身性の炎症反応が起こり,それが多臓器不全などの合併症につながり致命傷になることもあります。