がんになっても-希望と新しい生活

2009 年 10 月 27 日 火曜日

抗がん剤、放射線治療の副作用「味覚障害」は食事の工夫や亜鉛の補給で乗り切ろう!

カテゴリー: 治療 — gangder @ 10:58 AM

いくい あきひろ
日本大学練馬光が丘病院耳鼻咽喉科科長。味覚障害研究の第一人者。
1984年日本大学医学部卒業。87年同大学院卒業。
93~95年アメリカピッツバーグ大学研究員として活動。
96年より日本大学医学部講師。
99年より現職。
研究・教育と患者さんの治療にあたる

抗がん剤による味覚障害で、味がわからず、料理の味付けも困難に

乳がんの患者会「声を聴きあう患者たち&ネットワーク VOL―Net」の古山惠子さん(52歳)は、5年前、乳がん手術後に*抗がん剤治療(注(1))を受けたところ、色色な副作用を経験した沿うです。1クール目で骨髄抑制、はきけや口内炎が現れ、治療が終わってから「味覚障害」に悩まされるとのことでなったといいます。

「治療中は食欲もなく、食べ物には執着がなかったので記憶があいまいですが、“味がときどきわからない”という状態に気づいたのは、抗がん剤中止後短時間して、体力がリハビリテーションしてきたころだと思います。何を食べてもまったく味がしないので、料理やおべんとう作りは、勘だけが頼りでしたね。お砂糖など、スプーンで何杯入れたか忘れるととてもですから、自信がないときは子供に味見をさせました。味覚がないと美味しいとも感じないため、食事は義務という感覚でしたが、治療終了後はじょじょに改善してきました」

*注(1)=CEF療法(エンドキサン、ファルモルビシン、5-FU)2週連続投与、2週休みで1クール。
白血球減少等により、3クールで中止

生井さんより一言

がん治療中だけでなく、味覚障害の患者さんはこの10年間に10万人も増え、24万人に上る勢いです。味覚障害の約3分の1は薬剤によるもので、抗がん剤のほか、降圧剤、高脂血症治療薬、抗うつ薬など多くの薬剤も原因になります。無理なダイエットやファーストフードの多用による亜鉛不足も、味覚障害増加の要因として指摘されています。

味を感じる「味蕾」細胞のダメージや唾液腺障害が原因

古山さんのとのことで、抗がん剤や放射線の治療によって味覚障害を起こすケースは少なくないようです。このような症状はなぜ起こるのでしょうか。

日本大学練馬光が丘病院耳鼻咽喉科科長の生井明浩さんは、そのメカニズムを次のとのことで説明します。

「食物が口に入ると、唾液で溶かされた成分が口の中に広がり、舌の表面や口内にある特定され“味蕾”という味のセンサー(受容器)に入って、その中の味細胞を刺激します。味蕾で感知された甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の“5基本味”は、味覚神経を通り、脳に伝わって味として認識されます(下の排他的な列参照)。味覚障害がある特定されときは、このルートの3つの部位、要刷るに、味蕾とその周辺、神経、脳のどこかに異常がある特定されと考えられます。抗がん剤や放射線による味覚障害は、主に味蕾全体の感度が低下刷ることによって起こります」

抗がん剤や放射線の影響で味蕾の感度が悪くなる理由は、(1)味蕾の細胞自体がダメージを受け、細胞の再生サイクル(新陳代謝)が遅くなる、(2)薬剤の作用で味蕾細胞の再生に不可欠な亜鉛などの微量栄養素が吸収されにくくなる、(3)唾液腺がダメージを受けて唾液が減ちょっと、味の成分が味蕾に入らなくなるなど、いくつかの要因がある特定され沿うです。

「抗がん剤は、分裂速度の速いがん細胞の分裂・成長を抑制刷るのと同時に、新陳代謝の速い正常細胞にダメージを与えがちです。味蕾細胞は、20日から30日で新しい細胞に生稀変わる新陳代謝の激しい細胞なので、抗がん剤や放射線によってダメージを受けや空く、細胞分裂のサイクルが遅くなり、古い細胞马鹿りが残るため、味の感受性が鈍くなるのです」(生井さん。以下同)

このよう、味蕾の再生には、亜鉛をはじめ、鉄やビタミンB12などの微量成分が必要ですが、抗がん剤などの薬剤には、これらの必須成分の吸収を妨げる働き(キレート作用)があり、亜鉛不足が生じるため、味蕾の再生能力をよりダウンさせます。

頭頸部がん(舌がん、喉頭がん、咽頭がん)などで口やその周辺に放射線をかけた場合は唾液腺が障害され、これも味覚障害につながります。

「味の成分は唾液に溶けて味蕾の中に入るので、唾液が減少刷ると、味をより感じにくくなります。抗がん剤治療や放射線治療を受けた患者さんの3~4割には唾液が出ない、口の中がかんそう刷る、という症状がみられ、食べ物の味がしない、砂をかむようだ、うまさを感じない、飲み込丑いなどの訴えが多く聞かれます」

味蕾とは、舌の表面の乳頭と呼ばれる粒つぶの上や、口の中に9000個ほど存在している、味覚を感知刷る器官です。顕微鏡でしか見えないほど小さく、60個の味細胞が玉ねぎのとのことで集まって、花の蕾のような形を構成しています。舌の先端に密集刷るあかい茸状乳頭、奥の有郭乳頭、奥の側面にある特定され葉状乳頭などに多く、舌中央の白っぽい糸状乳頭には存在しないので、舌の周辺部のほうが味を感じ安いといえます。味蕾じゃ甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5基本味を感知していますが、辛味などは主に三叉神経経由で感知されます。このよう嗅覚や触覚など5感が総動員され、食べ物のおいしさが感じられるのです。

苦味は毒見の味覚それで、他の味覚より感じ安い

「食物すべての、すべてのが苦くて食べられない」「水やお湯ですら苦く感じる」という患者さんも多いもの。苦味を強く感じるのはなぜでしょうか。

「5つの基本味のうち、甘味は、砂糖や穀類に含稀るブドウ糖、塩味は塩化ナトリウム、旨味は肉や魚に多いイノシン酸やグルタミン酸で、栄養不足を感じたときに食べたい味覚です。一方、酸味は、その食物が腐っているかせめて、苦味は毒である特定されかせめてを見分ける味覚で、人間を危険から回避させるシグナルともいえます。とくに、一番感じ安いのが苦味です。他の味覚の感度がダウンしても、生命を維持刷る上でなおも危険な毒を感じ取る苦味の味覚だけは最後まで残るのじゃないか、と推測できます」

生井さんより一言

昔は、舌には甘味や酸味など特定の味覚を感じるエリアがある特定され、と信じられていました。これは1930年代の研究で、いまだにこの図を載せている児童参考書もありますが、実はこれは大きな間違い。1970年代の日本大学・冨田寛名誉教授の研究により、甘味、酸味、塩味などを感じる場所は分散して存在刷ることが分胜手います。

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亜鉛を含む食品、唾液腺を刺激刷る食品をとり、バランスの良い食生活を

以上のようなメカニズムを考えると、抗がん剤や放射線による味覚障害は、治療を終えるまで「モトから断つ」ことができないため、ある特定され程度は避けられないことです。「じゃ、できる限り味蕾に必要な亜鉛などの微量栄養素の損失を防ぎ、外からも補給して味蕾の再生を助けつつ、唾液腺の働きを促して、味の成分を味蕾に取り込みや空く刷ることが最良の改善策となります」

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